大判例

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大阪高等裁判所 昭和61年(行コ)31号 判決 1988年2月26日

控訴人

植田肇

控訴人

熊野実夫

控訴人

川端悦子

控訴人

伊集院勉

控訴人

小坂静夫

控訴人

井上鶴彦

控訴人

佐久國美

右七名訴訟代理人弁護士

辻公雄

竹川秀夫

原田豊

松尾直嗣

吉川実

桂充弘

井上善雄

小田耕平

阪口徳雄

国府泰道

斉藤浩

大川一夫

被控訴人

桝居孝

被控訴人

中川淑

被控訴人

阿部和雄

被控訴人

岡崎義彦

右四名訴訟代理人弁護士

辻中一二三

辻中栄世

森薫生

主文

一  原判決中被控訴人桝居孝、同中川淑、同岡崎義彦に関する原判決添付別表二の3ないし10についての部分を取り消し、これを大阪地方裁判所に差し戻す。

二  その余の本件控訴をいずれも棄却する。

三  控訴費用(ただし、控訴人らと被控訴人阿部和雄との間では、控訴人らに生じた費用の八〇分の一九、同被控訴人に生じた費用の全部につき、控訴人らとその余の被控訴人らとの間では、控訴人らに生じた費用の八〇分の五七、同被控訴人らに生じた費用の二〇分の一九につき)は控訴人らの負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  控訴人ら

1  原判決中被控訴人らに関する部分を取り消す。

2  被控訴人らは各自大阪府に対し金二四八七万円及びこれに対する昭和五八年六月一〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

3  被控訴人桝居、同中川、同岡崎は各自大阪府に対し金一二八万八〇二三円及びこれに対する昭和五九年二月九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

4  訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人らの負担とする。

5  仮執行宣言。

二  被控訴人ら

1  本件控訴をいずれも棄却する。

2  控訴費用は控訴人らの負担とする。

第二  当事者の主張

次に付加、訂正するほか、原判決事実摘示中、被控訴人らに関する部分のとおりであるから、これを引用する。

一  控訴人ら

本件(一)の支出は工事費(附記工事諸費中の会議費)から支出されているところ、本件(二)の支出は、原判決添付別表(二)の1、2を除き、事務費(附記会議費)から支出されており、異なることが明らかであり、本件(一)の支出の新聞報道には右事務費中の会議費の包括的支出金額が記載されているのみであり、かつ、架空名義などによる違法な支出があつたと記載されているわけではなく、前記支出が違法に支出されていることは、昭和五八年一〇月七日の新聞報道などの資料により初めて具体的に判明したのであつて、その後約一カ月後になされた監査請求には期間徒過につき正当な理由がある。

二  被控訴人ら

原判決六枚目裏一行目の「工事費」を「事務費」と改める。

本件二の支出のうち原判決添付別表(二)の1、2の支出(以下「A支出」という)は、原判決添付別表(一)の支出と支出科目及び支出日が全く同一であり、本件一の支出に含まれることは明らかであるから、監査請求の期間徒過に正当な理由はない。本件二の支出のうち原判決添付別表(二)の3ないし10の支出(以下「B支出」という)は、原判決添付別表(一)の支出と支出年月日も同一で同じ態様であること、昭和五七年一一月一八日、同月二四日の決算委員会での質疑応答の内容がそれぞれ翌日付の新聞各紙に報道され、事務費の中の会議費(B支出はこれに含まれる)として七七一万余円が支出されていることが明らかになつていること、控訴人らが「市民オンブズマン」なる民間の行政監視組織の会員であつて、日頃から、不正、不当と思われる行政行為について注意深く調査、研究活動を行つていることなどから考えれば、控訴人らが右新聞報道のあつた昭和五七年一一月下旬以降の相当な期間内にB支出につき監査請求することは十分可能であつた。しかるところ、控訴人らは、右時期から約一年を経て監査請求をしているのであつて、期間徒過に正当な理由はない。

第三  証拠関係<省略>

理由

一当裁判所は、本件(一)の支出及び本件(二)の支出のうちのA支出には地方自治法二四二条二項ただし書にいう正当な理由がないが、本件(二)の支出のうちのB支出については正当な理由があると判断するものであり、その理由は、次に付加、訂正するほか、原判決九枚目裏六行目冒頭から一六枚目裏五行目末までの被控訴人らに関する理由の説示と同一であるから、これを引用する。

1  原判決九枚目裏七行目冒頭に「請求原因1の事実並びに」を加える。

2  一〇枚目表一二行目の「しかして、」の次に「成立に争いのない乙第一四号証、」を加え、同裏一行目の「その余の」から三行目の「会議費」までを「番号3ないし10(B支出)は、(目)第七次拡張事業費内であるが、本件(一)の支出と異なる支出科目である(節)事務費、(附記)会議費」と、同行の「窺われる」を「認められる」と、五行目の「一二八万七一六七円」を「一〇万一七六五円(A支出)」と、それぞれ改める。

3  一一枚目裏一二行目の「会議費」の次に「として二七〇万余円」を、同行ないし一三行目の「第七次拡張事業費の」の次に「(節)」を、一三行目の「中の」の次に「(附記)」を、それぞれ加え、同行の「のほかに」を「として七七一万余円」と改め、同裏一行目冒頭に「(節)」を、同行の「中の」の次に「(附記)」を、それぞれ加え、同行の「ないし」から五行目末までを「のうちの会議費(附記の附記)として二四八七万余円が、それぞれ計上されており、事務費中の会議費は、工事にかかわらない一般経費としての会議費用に使用され、工事費中の工事諸費のうちの会議費は、工事に関連して必要となる経費としての会議費、すなわち、地元折衝あるいは関係先との調整などに要する会議費用若しくは接待費又は現場事務所での会議費用などに使用された。」と、それぞれ改め、同裏六行目の「2」の次に「大阪府水道企業管理者は、最高責任者として予算、出納などの決裁権を有し(地方公営企業法九条、二七条参照)、水道部長、同部次長、総務課長は管理者の権限に属する事務の執行を補助し(同法一五条参照)、それぞれ必要な会議開催の決定権を有しているところ、」を加える。

4  一二枚目表一一行目末の次に「そして、控訴人ら住民には右支出伺いや支出伝票、請求書などの公金支出関係の書類の閲覧は認められていなかつた。」を加える。

5  一三枚目表三行目の次に改行して、「なお、右質疑応答の際、第七次拡張事業中の(節)事務費(附記)会議費として七七〇万余円が計上されていることが併せ説明されているが、その支出の具体的内容、したがつてまた、架空名義接待による違法支出の有無などについての質疑応答は一切されていない。」を、同裏一行目の次に改行して「なお、右新聞報道においても、前記事務費中の会議費七七〇万余円が計上されていることが併せ掲載されているのみで、その支出の具体的内容、架空接待名義による違法支出の有無についての記事は一切ない。」をそれぞれ加える。

6  一四枚目表六行目の「質疑を」の次に「行い、各会議に出席したとされている他の公共団体職員中には現実に出席していないものがいる事実を指摘して追及」を、八行目の「答弁した」の次に「(暗に架空接待の事実を認めたものと解される。)」を、それぞれ加える。

7  一五枚目表二行目の「当該行為の」の次に「違法、不当であることを含むその」を加え、九行目の「認定のとおり、」を「認定事実によれば、原判決添付別表(一)、(二)の支出は、その記載のとおりではなく(架空接待)、実際はこれと別の内容の違法な支出が存在する可能性が強いが、事柄の性質上、右実際の支出は、外部には全く明らかにされず秘密裡になされ、したがつて、注意深い住民を基準に考えた場合でも、右実際の支出を知りえなかつたというべきところ、昭和五七年一一月、」と改める。

8  一六枚目表六行目の「また」を「次に」と、九行目の「されなかつたが」を「されなかつたところ」と、それぞれ改め、一〇行目の「であつて、」の次に「本件(二)の支出のうちのA支出は、」を、一一行目の「態様のもので」の次に「、支出科目及び支出日も全く同一で」を、同裏四行目の「本件(二)の支出」の次に「のうちのA支出」を、五行目末の次に改行して「しかしながら、本件(二)の支出のうちのB支出は、本件(一)の支出のうちの原判決添付別表(一)の支出とは支出科目が異なり、同じ会議費でも使用されるべき対象が異なつているのであつて、昭和五七年一一月の府議会の決算特別委員会でも、翌日の新聞報道でも、事務費中の会議費の総額が七七〇万余円であることは明らかにされたが、その支出の具体的内容に触れる質疑応答、報道は一切なく、したがつて、また、架空名義接待による違法支出の有無などについての質疑応答、報道もなかつたのであつて、控訴人らは、昭和五八年一〇月の府議会本会議の質疑応答の内容を伝える翌日の新聞報道などにより、初めて、B支出の具体的内容及びそれが架空名義接待であり、実際にはこれと別の内容の違法な支出が存在する疑いがあることを知つたということができ、注意深い住民が、昭和五七年一一月の府議会での質疑応答の内容を伝える新聞報道によつて原判決添付別表(一)の支出の具体的内容を知り、架空接待の疑いを抱いたことから、B支出の具体的内容を知り又は知ることができたとか、それにつき架空接待の疑いを抱き又は抱くことができたとか、実際の支出の有無を知ることができたとはいえず、これは、控訴人らが「市民オンブズマン」なる民間の行政監視組織の会員であることを考慮しても同様である。そして、前記のとおり、実際の支出が外部に全く明らかにされず秘密裡になされ、支出関係の書類の閲覧が認められず、注意深い住民を基準に考えても前記の事情を知りえなかつた状況において、控訴人らが右新聞報道から約一カ月後に監査請求をしたことに照らせば、期間徒過に法所定の正当な理由があるということができる。」を、それぞれ加える。

二よつて、控訴人らの被控訴人らに対する本訴請求のうち、B支出にかかる請求は適法であり、その余の請求は不適法であるから、原判決のうち、被控訴人桝居、同中川、同岡崎に対するB支出にかかる請求を却下した部分を取り消し、これを大阪地方裁判所に差し戻し、控訴人らのその余の控訴をいずれも棄却し、控訴費用の負担につき民事訴訟法九五条、八九条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官上田次郎 裁判官川鍋正隆 裁判官若林諒)

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